新規事業展開における契約書の重要性

経営上の力点である「新規受注の確保」と「付加価値の増大」から契約書の重要性を考えてみたいと思います。

 

神奈川県中小企業家同友会の神奈川同友会景況調査(1月~3月期)のレポート(玉川大学経営学部助教 長谷川英伸)によると以下のような報告があります。
「経営上の問題は、「従業員不足」「同業者相互の価格競争の激化」「熟練技術者の確保難」の順に割合が高い。これらの課題をクリアするために「新規受注の確保」「付加価値の増大」「人材確保」への取組に経営上の力点が置かれている。」(『神奈川県中小企業家同友会の景況調査~概況報告~』より)

経営の力点はどこにある?

また、今後新たに力点を置きたい項目でも、「新規受注の確保」「付加価値の増大」に多くの回答があったようです。

 

ここで、注目したいのが共通して力点を置き、置こうとしている「新規受注の確保」と「付加価値の増大」です。

 

いずれも、「新規事業展開」という形で、既存の製品やサービスの受注を増やしたり、新しく提携先を見つけ、コラボレーションなどで付加価値をつけて新しいサービス等の展開を図るということが行われると考えられます。

 

「新規」という点に注目して経営に取り組むということが、今の力点といってもいいでしょう。

既存の取引先との関係は?

さて、契約書の役割については、前回の記事で述べたように、「お互いの意識にズレがないか?」を確認するツールとしてとらえてみようということでした。

 

さらに今回は、契約書の役割を具体的に新規事業展開というビジネスシーンにおいてで検討します。

 

法的には、新規事業も「口頭」でも契約は成立します。また、安定的な取引先や従来からの取引先とは「信頼関係」が構築されていて、「口頭」でのやり取りでも、あまり抵抗感はないのかもしれません。もちろん、裏切りがあれば、その安定的な取引先や従来からの取引先から取引停止という危険があるので、「契約を守る」ということになるでしょう。

 

既存の取引先との契約は、長い間で築き上げた信頼関係や、取引停止という危険があるからという背景があるがゆえに口頭でのやりとりでビジネスが進むことになっています(契約書という形式をとらず、メールだけであったりも)。

新規事業は攻めの姿勢。けど、ちょっと待って。

しかし、新規事業となると、信頼関係がないとまでいわないし、取引停止という危険はありません(すでに売り上げがあるわけではないので、売上のマイナスにはならない)。また、経営者同士、担当者レベルで攻めのビジネスとして、スピード感をもって展開していこうとします。いわば、ノリで進んでしまうということもありうることです。

 

ここで、落とし穴があります。

 

「守る」という観点です。

 

既存の取引先では、デメリットが起きることが予測されるためお互いの信頼関係を「守ろう」という姿勢が自然と出てきます。

しかし、新規では「攻め」の姿勢です。経営課題をクリアするため、売り上げをアップするため攻めるというシーンです。そこでは、「守る」という姿勢が既存の取引先と比較して薄くなりがちです。

 

さらに、既存の取引先との新規事業ではない場合は特に、考え方、意識の差、価値観、イメージなどが異なることもあります。その人を信頼していることは、必ずしもその人が描いているビジネスモデルと自分の描いているモデルが一致していることにはなりません。

 

だから、前回のブログで書いたように「お互いの意識にズレがないか?」を確認するツールとしての契約書が役に立つはずです。また、新規事業が必ず成功するということは誰も保証できません。そして、リスクも当然あるでしょう。

まとめ

お互いが描くビジネスモデルを共通認識を持てるように契約書で見える化すること。誰が、どのような権利や義務があるのか?といったビジネスモデルにおける役割を明確化していくこと。

 

このような「守り」という観点も持ちながら、新規事業の「攻め」をするのが望ましいでしょう。

 

経営課題を解決するための挑戦は、攻めの姿勢。しかし、「守る」という姿勢も同時に意識しておきたいですね。