秘密保持契約書(NDA)のリスクから契約書のチェックポイントを考えてみる。

ここ数年で、業務提携や業務委託の交渉前に、秘密保持契約(NDA)を締結するケースが増えているようです。

 

この秘密保持契約(NDA)でも、一般的な契約書の注意事項が妥当します。

 

例えば、「当事者にしかわからない」「専門用語・業界用語」が多いことや「曖昧な言葉」は使わないというようなことです。

 

では、秘密保持契約(NDA)で、上記の注意事項をより具体的に検討する点はどこか?ということを、今回はお伝えしたいと思います。

言葉で「?」がつくのはどこか。

秘密保持契約(NDA)で、問題となりやすいのは、「秘密情報」に該当するかどうか?です。この点は、秘密情報の定義があるから大丈夫ではないか?と思われます。しかし、定義規定に該当するかどうか?は当事者間での認識の違いが生まれやすい点です。

 

したがって、その定義に該当するか否か?ということをどのように決めていくのか?がポイントになってきます。

 

そして、一般的な条項では、「秘密情報である旨を明示し」といったことが記載してるでしょう。

 

ただ、この言葉があるから大丈夫でしょうか?

 

少し落ち着いて考えてみると、「明示」する方法はどのようにするのか?ということです。ここで「?」が出てき始めるのです。

方法が書いてあるから大丈夫?

明示する方法として「書面により」ということが書いてあることがあります。

 

確かに、書いてあるから大丈夫と思うかもしれません。

 

しかし、実際のビジネスの交渉プロセスで、必ず書面のやり取りをしているのか?というと違うと思います。特に、業務提携や業務委託契約前の交渉ですから、口頭でのやり取りが主になるでしょう。もちろん、プレゼンテーションではスライドや写真、口頭で秘密情報に該当する情報が開示されることもありえます。また、交渉過程の記録を残すという意図で「メール」によることも多くあると思います。

 

そうすると、自分では秘密情報として伝えたとしても、書面で秘密とされなかったから大丈夫と相手方に認識を与えてしまうかもしれません。

 

実体を言葉に当てはめていくととすると、「書面により」という言葉が、実体と合っていないということが分かります。そこで、「書面」というだけではなく、「電子的記録により」という言葉も必要になるでしょう。さらに、プレゼンテーションの場面では「口頭」ということも考えると、「口頭」で秘密情報を伝える場合は?ということも想定しなければいけません。

実体やプロセスと合わせた文言にして、相手と共通認識を持とう

今回のブログで取り上げた点だけではなく、そのほかにもチェックポイントはあります。ただ、着眼点はどの条項でも同じで、次の点に注意してください。

 

秘密保持契約(NDA)は、交渉を早く進めたいことや、一般的なひな形を流用するということも多く、サインを精査せずにしてしまいがちな契約です。

 

確かに、ビジネスはスピード感が求められます。

ただ、スピード感が必要としても、秘密情報を開示することで、相手方がそれを利用するというリスクもあるということを念頭に置いておいてください。

 

信頼関係がもともとある間柄であっても、一呼吸を置いて、お互いに「こうしていこう!」を確認しながら進めていくということのほうが、確実性が増してくるはずです。

 

契約書は、相手を疑うということから入るものではなく、リスクを予測や把握しながら「こうしていこう!」を確認するツールです。

相手と共通認識を持って初めて、リスクの予防を講じることができるものです。

このツールを使い、「実体にあっているか?」もお互いに検証しながらビジネスを進めていけるようにと思います。